人の身になって

新年、あけましておめでとうございます。
どこへ旅行に行くというでもなく、相変わらずの寝正月でしたが、肝臓を悪くして酒が飲めないという、最悪の日々でした。
庭の手入れや部屋でテレビを見ていると、通りを隔てた近くの「浦安市総合福祉センター」に、市が補助しているどこまで乗っても100円の福祉バスが止まります。
福祉施設内の駐車場の一部に止まるので、道路を走る車の通行の邪魔にはならず、時間調整にはちょうど良い。
昨年の秋頃から、停車している間中、「バスが停車しています・ご注意ください」とのメッセージが、そこそこ大きな音で流れる…
「停車します」、「発車します」なら1回だけですが、止まっている間中、10回近くは流される。家の近くなので、ハッキリ言って、うるさい!
停車していることくらい見ればわかるし、止まっているのだから注して下さいもなかろうと、そのうち、ついでがあったら市に文句を言いに行こうかと思っていました。
ところが正月の3日、今年の家庭菜園の準備をしていると、そのバスが停車した…つえをついた初老のご婦人が下りてきて、地面に立つと、クルリと後ろを向きました。
そしてサングラスをかけた、自分の子供と思われる30歳くらいの人に手を伸ばしました。
そのとき、ようやく気が付いた。あの「バスが停車しています。ご注意下さい」とのメッセージは耳が遠かったり、目が不自由な方々のためのものであると。
自分が健常者だと、ついついその視点でしかものを考えない。メッセージがうるさいと文句の一つも言いたくなる。自分中心の思考です。

家を建てるにも、その材料を選ぶにも、こちらの立場ではなく、使う人、その家に住む人の視点、視線がいかに大切かを、そのことからも思い知りました。
こちらが親切心で選んだ什器や内装材も、本当にそこに住む人たちに快適さや住む喜びを与えられるのか…
昨年末に事務所を改装し、設計士、デザイナー、そして施主の人たちと、ゆっくり話し合えるスペースが出来ました。こちらが売りたいものを売るのではなく、また量を沢山使ってもらうのでもなく、その家にとってアクセントとなる、木の香りを楽しみ、見ているだけでホッと出来る空間づくり。

人の身になって物事を考えることの大切さに、あらためて気づかされた年初でした。