昨年経営を始めるにあたり、信念や想い、情熱もさることながら、じゃあ会社として具体的に何をやるかを示す必要がありました。
色々考えた結果ようやく肚に落ちたのが、「杉の床」と「丸太を可能な限り無駄なく使うこと」でした。
前者に関しては、「羽目板はやらないのか。」「ヒノキやサワラも扱うべきじゃないか。」という意見も出ましたが、あれもこれもできますというのは裏を返せば何もできないのと同じこと。
そして何より、「やらない」のではなくて、優先順位を付けたということ。
「ここちよい時間と空間をつくるお手伝いをする」という信念のもと、それを叶える上で、安らぎの効果が特に期待できる「杉」を。起きている間長い時間触れている「床」を取扱うという優先順位を付けました。
もちろん、ご相談させていただく中でご要望に沿って拡げていくこともありますが、限られた時間と資源の中で、「絞る」ということがとても大事だと、今は考えています。
そのおかげで、「榎戸さんのとこ、杉やってたよね?」と、お話をいただく機会が何度かありました。
あれもこれもやっていたら結局何も刺さらず、記憶にも留められず、そのようなお問い合わせをいただくはなかったかもしれません。
もう一つの、「丸太を可能な限り無駄なく使うこと」。
榎戸材木店のレーザー加工機は、そのために導入したはずの手段でした。
しかし昨年、レーザーによる加工の多くが受託によるものでした。
自分の未熟さと焦りから目先の仕事にとらわれ、材持ち込みで委託していただいた加工に追われ、当初の目的を見失っていました。
丸太から仕入れることになったことをきっかけに、もう一度原点に立ち返り、一般的な製材の歩留りの140〜170%の材利用を見込めるようになりました。
これもまた、「やらない」のではなく、優先順位を意識し直した結果だと思います。
人も、時間も、お金も、場所も、有限である以上、優先順位を付けるということがいかに大事か、改めて考えさせられました。